洪水に強い地域作り、JICAが取り組み報告

国際協力機構(JICA)はこのほど、2011年のタイ大洪水を受けて、農業部門の水害対策強化を目的に昨年から実施していた「農業セクター洪水対策調査(緊急開発調査)」プロジェクトのファイナルワークショップを開催した。プロジェクトの核となる災害に強い農業・農村づくりガイドライングリーンファームの策定に取り組んだ各地域の村長らが成果を報告した。

プロジェクト実施期間は2012年2月〜13年6月。チャオプラヤー川の流域にあり、雨期(6〜10月ごろ)に頻繁に浸水する北部ピサヌローク、中部アユタヤ、チャイナート、パトゥムタニの4県、約7カ所をパイロット地区に指定して実施された。

住民らは、◇将来的な災害に備えた避難場所マップなど、地域の災害リスクマネジメントプラン策定◇地域内での小規模な遊水地の設置を含む水資源管理システムの再構築◇被災からの早期の生活復旧を支える園芸作物(野菜)の栽培◇被災地の経済的自立を促進する地域内の野菜販売所(グリーンマーケット)の設置運営――などに取り組んだ。

チャオプラヤー川流域の低地ではほぼ毎年浸水被害が発生しており、農地が被災した場合、政府の補償や社会からの物資寄付を受ける形で、農村復旧が支援されてきた。ただ社会の変化に伴い、こうした支援だけでは生活の復興に十分ではないとの認識が高まりつつある。

11年の洪水被害でも明らかになったように、今後も大洪水が発生した場合、工業団地や経済地区を守るためにフラッドウエー(放水路)として周辺の農業地域が犠牲を強いられる可能性が高い。これを踏まえ、常時から各地域で住民が積極的に防災に取り組み、被害を最小限に抑える対策が求められていることが、今回のプロジェクト実施の背景にある。

報告会では、地域レベルでの防災ガイドライン策定と並行して引き続き取り組むべき課題として、複数の行政村が共同で使用できる小規模遊水地の設置や、地方自治体と農業・協同組合省灌漑(かんがい)局、内務省災害防止軽減局などが連携した洪水警報システムの構築、土地利用状況のデータベース化などが挙げられた。